おいしい野菜栽培のコツ

野菜栽培を成功させるには、いくつか知っておくべきポイントがあります。以下のポイントを熟知した上で本を一冊読むと理解が深まります。園芸の入門書を読むと簡単にしか書かれていなくて疑問点が残ることが多いと思います。そんな点を解決するヒントと園芸のコツを伝えるのがこのページの目的です。

野菜栽培のマニュアル本に忠実に従う

畑で栽培を行うなら畑栽培用の本、プランターで栽培するならプランター栽培用の本を1冊用意しましょう。「絶対に成功する家庭菜園」「失敗しない野菜作り」といった趣旨の本がありますが、読んでみると畑で栽培することを想定して書いてあり、プランター栽培では役に立たないことはよくあります。また、野菜栽培専用の本がおすすめです。「花、果樹、野菜」を複合的に扱っている本は土作りや肥料の説明がわかりにくいものが多い実感があります。自分が育てる環境と同じ状況を想定して書いてある本があなたのマニュアルとなります。「適当に肥料を与えている」「適当に苗を植えている」「畝間なんか気にしたことない」といういい加減な栽培は失敗します。これらマニュアル本に書いてあることは長年の研究成果として、ベストだと思われる方法を提示しているのです。一度、マニュアル本に忠実に育ててみましょう。

畑とプランターの栽培法は全く別のものと心得る

1、で示したように栽培環境に応じたマニュアル本を用意して実践して下さい。施肥設計、水やり、土の種類と全て異なっていることがわかると思います。もし自宅の庭が粘土質の土であれば、それを改善することから始めなければなりません。一方、プランターで栽培する場合は野菜専用培用土を買えば済んでしまいます。畑とプランターで栽培法が異なることを自覚して下さい。

適切な土壌環境を作る

土壌は植物が根を張る場所であり、水、養分、酸素を吸収する最も大切な外部環境といえます。土に詳しいことが園芸を制するといってもいいでしょう。知っておいた方がいい知識であるが、入門書ではあまり触れられていないので細かく説明してみました。目指すべき土とは「保水力を持ち、水はけがよく、保肥力が高く、微生物が活発に生きていける団粒構造の土」です。これがどのように作られていくのか以下を読むと実感できると思います。

なぜ土が存在しているのか

土は砂と粘土と腐植からなる。腐植が砂と粘土を結びつけ、土として存在するのです。大昔の地球は岩でできていた。岩は雨、風、太陽熱などの影響を受け、ヒビが入り、割れ、砕かれて細かくなっていき砂となる。砂や岩からケイ酸やアルミナが溶けだしてきて水や空気と反応して粘土を作る。枯れた植物や動物の遺体などの有機物が腐敗し、分解され腐植を作る。砂と粘土を腐植が結びつけて団粒構造をもった植物に適した土を作りだす。土を水で濡らして手でこすってみてヌルヌルしているのが粘土、ザラザラしているのが砂です。

砂土、壌土、埴土

砂を大きさで分類すると礫(保肥力と保水力に劣り、水はけがよい)>粗砂(保肥力に劣るが水はけはよい)>細砂(少し保肥力があり、水はけがよい)>微砂(保肥力があり、保水力がありながら、水はけもよい)>粘土(保肥力は高いが、水はけが悪い)となる。粘土も砂の一種といえる。どの大きさの砂をどれだけ含んだ土なのかによって、土の性質がきまる。粘土が多ければ保水力は高いが、通気性や水はけが悪くなる。礫のような大きい砂が多い土は保水力が低く、すぐに乾くが、水はけと通気性は優れている。これら砂の割合から、砂土、壌土、埴土とわけられる。砂土は海岸の砂や川砂を80%以上含み、大きな砂からでき、保水力がない。壌土は粘土を25%~45%含み肥沃な土で多くの植物に向いている土である。埴土は粘土を50%以上含み通気性と水持ちはいいが水はけが悪い水田の土に向いている。

団粒構造

団粒構造

砂、粘土、腐植により、一粒の土ができる。この1粒の土がバラバラにある状態を単粒構造という。一粒の土が複数集まって大小の団子状の塊を作り、さらに団子状の塊が集まったものを団粒構造という。団粒構造が理想的な土なのである。団粒構造をした土は水はけに優れ、保水力もある。また、通気性、保肥力もよい。気相(空気)、固相(土、有機物)、液相(水)を持った土なのです。

単粒構造を団粒構造にするには3つのポイントがある。1、乾燥により、水分がなくなることで凝集させる。2、根を伸長させ、根が押し分けていくときの力で粘土や砂を凝集させる。3、微生物の働きにより有機物を分解し腐植を作ることで、粘土と砂をくっつける。微生物の働きがなくなると、また単粒に戻ってしまう。植物に良い土とは根の生育によい土のことである。植物の根は呼吸によって酸素を取り入れ、体内の有機物を分解し、二酸化炭素を排出し、エネルギーを作る。このエネルギーによって水と無機栄養素を吸収する。吸収するのはほぼ無機物です。つまり、微生物がいなければ有機物から無機物を作ることができず肥料を吸収できないのです。団粒化するには有機質肥料を混ぜて微生物の働きを活発化する必要があます。十分に酸素があると根がどんどん伸びていきます。空気がない場合は窒息状態となり根腐れする。根腐れを防ぐにも団粒化が必要です。

CEC

H、N、K、Ca、Mgはいずれも水に溶ける陽イオン。粘土や腐植はマイナスの電荷を帯びており、+と-で結びつき雨によって流されにくくなる。つまり土の陰電荷が多いほど、より多くの養分を維持でき、保肥力が高くなる。これは陽イオン交換容量といいCECという。

亜硝酸菌と硝化細菌

土の中の微生物には有機物を餌とする有機栄養微生物と無機物をエサとする無機栄養微生物がいる。土中の多くの微生物は有機栄養微生物であり、有機物を無機栄養素へと分解し、植物が吸収できる形である無機栄養素にしていく。このときアンモニウムイオンを土中に排出する。このアンモニウムイオンを亜硝酸イオンにする亜硝酸細菌、亜硝酸イオンを硝酸イオンにする硝化細菌がいる。いずれも無機栄養微生物である。亜硝酸イオンは有毒であるため、すぐに硝化細菌が硝酸イオンに作り替える必要がある。植物が吸収できる窒素分は硝酸イオンと亜硝酸イオンとアンモニウムイオンである。亜硝酸イオンとアンモニウムイオンを吸収するときは、特別な条件が整ったときや限られた植物であるため、ほとんどの場合、硝酸イオンとして吸収する。つまり、窒素を吸収するためには、亜硝酸菌と硝酸細菌の働きが不可欠であり。土壌環境を整えることは大切なのである。植物の根は老化した死細胞を切り離しながら成長し、切り離した細胞や、同時に外へ分泌される糖、アミノ酸、ビタミンは微生物にとってのエサとなる。それにより、根の周囲は微生物にとって暮らしやすい場所となる。

適切な施肥を行う。施肥の計算方法に熟知する

園芸マニュアル本には作物別に必要な肥料量や施肥時期が書いてあります。忠実に従うことをすすめます。特に窒素肥料を与えすぎると背丈が高いヒョロヒョロした野菜になり、えぐみのある野菜になります。逆に窒素が少ないと生長が鈍くなります。リン酸は元肥として全量を与えます。栽培後期になって与えても植物は吸収できません。結果として不十分な果実になってしまいます。このように施肥量は必ず守ってください。もし自宅にある土がすでに養分を含んでいるならその分はトータルの施肥量から引く必要があります。 適切な施肥を行うには施肥量の計算方法をしっておく必要があります。いかの例を参考にしてください。

施肥計算例

窒素(25g)、リン酸(30g)、カリウム(25g)が必要な場合 N-P-Kが8-8-8と書いてある化成肥料があった場合、その肥料中には8%の窒素と8%のリン酸と8%のカリウムが含まれていますよという意味です。化成肥料を何g取り出せば、窒素が25g含まれることになるのか考えてみましょう。8/100=25/xを解くとx=312.5gとなる。もしくは25/8%=312.5とだします。つまり、312.5gの肥料中に窒素が25g含まれていることになります。N-P-Kが8-8-8の肥料なので同様に312.5g中にリン酸とカリウムが25g含んでいることになります。あとは不足するリン酸5gが必要とわかります。過リン酸石灰(20%)と書いてある肥料を使ってみます。過リン酸石灰のパッケージ内に20%のリン酸が含まれていることになります。5g/20%=25gとなる。つまり、過リン酸石灰25g中に5gのリン酸が含まれていることがわかる。よってN-P-Kが8-8-8の化成肥料を312.5gと過リン酸石灰(20%)を25g用意すればよいとわかる。計算で覚えておくべきことは「ほしい栄養素のg数」/「ほしい栄養素の肥料中の含有率」で求める。わかりにくい場合は比例式を立ててみよう。これは堆肥でも同様である。化成肥料で複数の肥料を含んでいる場合は窒素を優先して計算し、不足するリン酸を補う。リン酸やカリウムは多少の増減は気にしなくてもよい。この計算は今後必要になるので覚えておいてください。

肥料と堆肥は別のものである

堆肥には「動物系由来の牛フン堆肥、鶏フン堆肥など」と「植物由来のバーク堆肥、腐葉土など」がある。前者は養分が豊富で窒素分も多いので肥料は控えめにする。フカフカした土にする効果は少ない。後者は養分は少なめだが、土をフカフカにする効果は抜群で土壌改良効果が高い。プランターで栽培する場合は植物性の堆肥を使うことがほとんどです。腐葉土を混ぜれば、肥料効果があると思っているかたも多いと思いますが、肥料効果は無視できるレベルしか含まれていません。植物性堆肥は微生物の働きを活発にし、保肥力を改善し、根に酸素をおくることができる理想的な土壌環境を作るのが目的ととらえてください。従って元肥は別に施す必要があります。もし、動物性堆肥を使う場合は、完熟した堆肥を使い、堆肥中に含まれる肥料分は元肥から引いて計算してください。完熟していない堆肥はガスを発生します。

石灰の役割を知る

酸性土壌のpHを上げるのが目的です。酸性土壌ではCaやMgが流亡してしまいます。また、植物ごとに適した土壌pHがありますので、目的のpHになるように使います。苦土石灰はCaとMgを含むため、pHの矯正と同時に肥料効果もあるので便利です。火山灰土壌ではリンを補給する目的で熔リンを混ぜることが多いですが、アルカリ性が強いので石灰は不要です。アルカリ性の土壌を酸性土壌に作りかえるのは難しいので石灰の撒きすぎには注意しましょう。

培養土の作り方

畑で栽培する場合は、自宅の庭を畑に作り替える場合や、すでにある畑を使うことになると思います。つまり、今ある土を使って栽培することになると思います。ベースとなる土は地域ごとに異なり、また雑草も生えていないカチカチの固い土を使う場合もあるでしょう。それら環境に合わせ改良していくことになります。重要なポイントは、植物が育ちやすい土壌環境を作ることです。団粒構造の土にし、元肥を混ぜ、育てていくことになります。プランター栽培では、新しく土を買ってきて育てることになるのでマニュアル通りに土作りをしましょう。培用土には「野菜専用培用土」「トマト専用培用土」「草・花・野菜培用土」などいろいろ売られています。パッケージの説明文を読み、マニュアル通りに育てれば、うまく育てられます。注意したいのは、pH調整済み、元肥・追肥不要のものまでさまざまなので柔軟に対応しましょう。培用土を手作りすることもできます。ベース用土として、「赤玉土(6~7)」に「黒土(4~3)」の割合で混ぜます。ベース用土と同量の腐葉土に過リン酸石灰を必要量混ぜておきます。そして、ベース用土と過リン酸石灰入り腐葉土を混ぜます。野菜を植える1週間まえくらいに苦土石灰を混ぜる。これで培用土ができあがります。また、ベース用土にゼオライトやモミガラクンタンなどを混ぜるとなおいい土になります。最も基本的な作り方なので、骨粉を使う場合などで作り方は変わってきます。人によっていろいろな作り方をしますし、野菜によっても作り方を変えることも多いです。いろいろな作り方を研究してみるといいでしょう。

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